会社員にとっては、ボーナスの次に魅力的な制度“有給休暇”。なにせ、有休をとった期間は、休んでも給料をもらえるありがたい制度です。
労働基準法で定められた労働者の権利なんですね。しかし、いざ休むとなると仕事の引継ぎをうまくやらないと休んでいる間に会社から電話がかかってくるなどして
“有休なのに休んでいる意味がない”といったことになりかねません。こういうことにならないように、有休をとる前に準備しておきましょう。
その他、有給休暇の取り方や、マナーなど上手な取り方のコツをご紹介いたします。
有給休暇の重要性とマナーの必要性
有給休暇は、働く人が心と身体をリフレッシュし、仕事のパフォーマンスを高めるために非常に大切な制度です。しかし、取得の仕方によっては、職場の雰囲気を悪くしたり、信頼を損ねる可能性もあります。たとえば、忙しいプロジェクト期間中に理由も告げずに有給を申請すると、周囲の同僚に不満が残ることがあります。もう一つの例として、直前に有給を取ることを上司に伝えた場合、業務調整が難しくなり、迷惑がかかることもあります。有給休暇は「権利」ではあるものの、「配慮をもって使う」ことで、職場全体の円滑な運営に貢献できます。
有給休暇の取り方に関する基本的なルール
労働基準法に基づく有給の権利
労働基準法第39条によれば、雇用開始から6か月間継続して勤務し、その期間の出勤率が8割以上であれば、最低10日の年次有給休暇が付与されます。これはフルタイム労働者に限らず、条件を満たせばパートタイム労働者にも比例付与される制度です。
たとえば、週5日勤務の正社員であれば、半年経過後に10日、1年6か月後には11日と増えていきます。また、週3日勤務のパート従業員も、その勤務日数に応じて年間5~7日程度が与えられることがあります。このように、労働形態に関わらず有給休暇は法的に保障された権利であり、安心して取得するためにはこの制度の正しい理解が重要です。
有給休暇の付与日数とその管理方法
有給休暇の付与日数は、会社ごとの就業規則に基づいて管理され、通常は入社日を基準に毎年更新されます。
たとえば、「4月1日入社の社員には毎年4月1日に有給が付与される」という形式です。別の例として、全社員を対象に「一斉付与日制度」を導入している企業もあり、たとえば「毎年10月1日に有給が更新される」というような形です。また、有給は2年間有効で、未使用分は翌年に繰り越せますが、それ以降は失効するため注意が必要です。有給を効率的に管理するには、会社の勤怠管理システムやスマートフォンのカレンダーアプリを使って、付与日と残日数を可視化しておくことが有効です。
有給休暇の取得と消化の基本
有給休暇を上手に取得・消化するためには、早めの申請と計画的な取得が鍵です。例えば、年初に年間スケジュールを立てて「毎月1日ずつ取得する」と決めておけば、無理なく消化でき、職場にも迷惑をかけにくくなります。実際に、ある企業では「計画的取得制度」を導入し、社員が1年の初めに有給取得希望日を提出することで、チーム全体で調整しやすくしています。もう一つの実例としては、月末の空いている日を狙って取得することで、業務に支障を出さず、しかも連休にしやすくなるという工夫もあります。また、申請は可能な限り2週間以上前に行い、業務の引き継ぎや情報共有を行うことがマナーとして大切です。
有給休暇を上手に取るためのマナーとコツ
有給休暇の申請時の適切なタイミング
有給休暇の申請は「いつ伝えるか」が非常に重要です。基本的には休む2週間以上前には申請するのが理想的ですが、可能であれば1か月以上前から上司に相談すると、よりスムーズに受理されやすくなります。例えば、ある企業では「社内イベントや大きなプロジェクトの日程が確定する前」に申請することで、休みやすい環境を作っています。また、もう一つの例として、週の初め(月曜日)ではなく木曜日や金曜日に取得することで、業務の引き継ぎも容易になり、休み明けに混乱するリスクを減らすことができます。こうした「計画的なタイミング」を意識することで、職場との信頼関係も構築できます。
上司・同僚への気配りと伝え方
有給を取得する際には、上司だけでなく、日頃から業務を共有している同僚にも配慮することが大切です。まず、申請前に口頭で「○月○日にお休みをいただこうと思っているのですが、ご迷惑にならないよう調整します」と伝えることで、信頼感が高まります。例えば、ある会社員は、業務繁忙期にもかかわらず「事前に引き継ぎリストを用意し、資料共有を済ませておいた」ことで、円満に有給を取得できました。また、別の例では、チーム全体のスケジュール表に「この日お休みいただきます」と事前に記載しておくことで、情報共有と連携がスムーズに進んだというケースもあります。このように「伝え方」一つで印象が大きく変わります。
繁忙期やプロジェクト中の工夫
繁忙期や重要プロジェクト期間中は、有給の取得が難しい場面もあります。しかし、適切な調整と工夫をすれば、休みを取ることも不可能ではありません。たとえば、ある企業の営業担当者は、繁忙期でも「重要業務を前倒しで処理し、サポートメンバーに引き継ぎ用のチェックリストを残して」有給を取得しました。また、別の技術系のチームでは、「プロジェクトのマイルストーンとマイルドな時期を見計らって」事前にスケジュールに有給取得日を組み込むことで、スムーズに休暇を確保することに成功しています。このように、自分の業務だけでなく、チーム全体の流れを読みながら休暇を計画することが、上手な有給の取り方のポイントです。
ケース別!有給取得時のスマートな対応法とは?
体調不良など急な休みの連絡の仕方
急な体調不良による休暇取得は誰にでも起こり得るものですが、連絡の仕方次第で印象は大きく変わります。まずは「できるだけ始業前に」電話やチャットで連絡を入れ、「本日体調が悪いため、お休みをいただきたい」と簡潔に伝えましょう。たとえば、Aさんは朝6時に発熱があり、上司にLINEではなく電話で「早めに伝えてくれて助かる」と感謝されたケースがあります。もう一つの例として、Bさんは急な腹痛で欠勤する際に「今日中に処理すべき案件」の対応を同僚に依頼し、後で「引き継ぎが明確で助かった」と評価されました。急な休みでも、事前の信頼と丁寧な連絡があれば、問題なく対応してもらえるのです。
旅行や私用での休暇理由の伝え方
有給休暇の取得理由を上司に伝える際、必ずしも詳細に説明する必要はありませんが、伝え方に配慮することで印象が良くなります。たとえば、「リフレッシュを兼ねて旅行に行く予定です」と正直に話すことで、上司から「しっかり休んでね」と快く送り出されたという例があります。別のケースでは、「家庭の都合で用事がありまして」とやや曖昧に伝えた社員が、「プライベートも大事だからね」と理解を得られた事例もあります。ポイントは、理由を述べる際に“誠実かつ簡潔”であること。特に上司との信頼関係を築いていれば、深く詮索されることなく、円滑に取得できる傾向があります。
周囲とのトラブルを避けるコツ
有給休暇取得時にありがちなトラブルとして、「周囲に知らされておらず、業務に支障が出る」ことが挙げられます。これを防ぐには、取得が確定した段階でチームの共有カレンダーに予定を記入し、事前に口頭でも「○日に休みを取ります」と伝えておくことが有効です。たとえば、CさんはSlackでチーム全員に「この日に有給を取ります。〇〇の案件は前日までに処理予定です」と共有し、非常にスムーズに休暇を取得しました。また、Dさんは休暇前に業務内容をまとめたメモを作成し、担当業務が誰にも分かるように配慮したことで、職場からの評価が高まりました。周囲の信頼を損なわずに有給を取るには、“事前共有”と“フォロー体制の準備”が鍵です。
有給申し込み手続きの流れとポイント
上司への有給休暇メール申請のコツ
有給休暇の申請は、まずは口頭での相談を経て、正式にメールで行うケースが一般的です。メールでの申請時には、件名は簡潔に「有給休暇申請の件」とし、本文では「いつ」「なぜ」「どのように業務対応するか」を明確に伝えることがポイントです。例えば、「○月○日に私用のため有給休暇を希望します。〇〇の業務は前日までに完了予定で、△△さんに引き継ぎ済みです」と書けば、安心感を与えられます。また、Bさんの例では、申請メールに加えて「業務の進捗状況と引き継ぎメモ」も添付し、上司から「丁寧でわかりやすい」と高評価を得ました。誠意と段取りを示すことで、有給申請はスムーズになります。
有給休暇メールの書き方や注意点の具体例
有給休暇のメール申請で最も注意すべき点は、曖昧な表現や失礼な言い回しを避けることです。例えば、「明日、用事があるので休みます」では、急な連絡であり説明も不十分で、上司を困らせてしまう可能性があります。一方、Aさんのように「〇月〇日に私用のため有給休暇を希望しております。業務は本日中に完了し、引き継ぎも済んでおります」と具体的かつ丁寧に伝えた場合、受理がスムーズでした。また、Cさんは誤って休暇理由を詳しく書きすぎてしまい、「家庭の事情で〇〇があり…」とプライバシーの詳細を述べすぎてしまったことで、逆に気を遣わせてしまった例もあります。適切な範囲で、簡潔かつ礼儀正しく伝えることが大切です。
職場の雰囲気と調整の重要性
有給休暇の取得は、制度としての権利である一方で、職場の雰囲気やチームのスケジュールとのバランスも大切です。たとえば、ある職場では「毎月○日には会議があるため、前後は避けて休む」など、暗黙のルールが存在していることがあります。Dさんのケースでは、チーム全体のスケジュールを見て、有給取得日を早めに相談し、同僚との間で交代制を整えたことで、トラブルなく取得ができました。もう一人のEさんは、プロジェクトの山場に休暇を申請したため、上司や同僚との関係が気まずくなってしまった例もあります。職場の空気を読む力と、事前の調整・配慮が、有給を気持ちよく使うための鍵となります。
上手な有給休暇の取り方とは?
有給休暇を計画的に利用することで、突発的な休みに頼ることなく、心身のリフレッシュを定期的に行うことができます。たとえば、Fさんは年間スケジュールに「月に1回、平日に休みを取る」と決めており、毎月第3金曜日を有給取得日に固定しています。これにより、心身のリズムが整い、週末との連休も取りやすくなります。また、Gさんは大型連休の前後に有給を組み合わせて10連休を確保し、家族旅行に活用していました。このように、前もって予定を立てることで業務調整もしやすく、休み明けの負担も軽減できます。計画的な取得は、自分にも職場にもメリットが大きい方法です。
繁忙期を避けた取得のメリット
繁忙期を避けて有給を取ることで、職場への影響を最小限に抑えつつ、気兼ねなく休暇を楽しめます。例えば、Hさんは毎年決算時期(3月)を避けて4月に有給を取得しており、「忙しい時期を支えてくれてありがとう」と上司からの評価も高まりました。また、Iさんはイベント部門で働いており、夏の繁忙期後に1週間の休みを計画的に取得。「スタッフ全体の疲労が落ち着いた時期に休めたので、精神的にも安心だった」と話しています。繁忙期を避ければ、引き継ぎや調整も容易で、業務への影響も最小限で済むため、同僚からの理解も得られやすくなります。
周囲への配慮と友好的なコミュニケーション
有給を取る際には、自分の業務だけでなく、周囲への配慮も大切です。たとえば、Jさんは休暇を取る前にチームミーティングで「〇日にお休みをいただきます。〇〇の業務は引き継ぎ済みです」と共有し、同僚から「丁寧な説明で助かった」と感謝されました。もう一つの例として、Kさんは休暇明けに「お休みありがとうございました」と簡単なあいさつメールを同僚に送り、「気持ちのいい対応だった」と社内での信頼が高まりました。こうした日々のコミュニケーションの積み重ねが、円滑な人間関係を生み、有給を取りやすい環境づくりにもつながります。
非常識な有給休暇の取り方とは?
有給休暇は労働者の権利ですが、取得方法によっては非常識と受け取られ、職場内での信頼を損なうことがあります。
最も避けるべきなのは「無断欠勤後の事後申請」です。たとえば、ある社員が「今日は無理だから休む」とだけLINEを送り、翌日「昨日の分、有給で処理してください」と伝えたケースでは、上司も同僚も対応に困り、信頼関係が大きく損なわれました。また、繁忙期の最中に何の相談もなく「明日から3日間休みます」と突然言い出した例もあります。このような振る舞いはチームに混乱をもたらし、「自分勝手だ」との批判を受けることもあります。事前の相談と調整、周囲への配慮がなければ、制度の悪用と見なされかねません。
職場トラブルを招く有給休暇の取り方
有給取得が原因で職場内の人間関係が悪化することもあります。
たとえば、チーム全体で業務が逼迫している中、1人だけが頻繁に長期の有給を取り続けた結果、「あの人だけ楽をしている」との不満が溜まり、同僚間の軋轢が生まれました。また、別の会社では、新人社員が有給をすべてまとめて取得しようとし、「まだ十分に引き継ぎできていない状態での長期休暇は困る」と上司が苦言を呈した事例もあります。有給を取る自由はありますが、チームで働いている以上、協調性と信頼が重要です。取り方を間違えると、トラブルや孤立を招くリスクがあるため、タイミングと対応の仕方には細心の注意を払いましょう。
有給休暇取得の実態と企業の取り組み
企業ごとの有給取得率の違い
有給休暇の取得率は企業や業界によって大きく異なります。
厚生労働省の調査によると、製造業やIT業界では平均50〜60%の取得率にとどまる企業が多い一方、大手外資系企業や一部の先進的なスタートアップでは80%以上の取得率を達成しているところもあります。たとえば、ある広告代理店では有給取得を積極的に推進しており、年5日以上の取得を義務化したうえで「有給取得目標80%」を掲げています。逆に、建設業界の一部では「休むと評価が下がる」という空気があり、実際には取得が進まないケースもあります。このように、制度の有無だけでなく、社内の風土や上司の理解度も大きく影響します。
社員の意識改善のための施策
有給取得を促進するには、社員一人ひとりの意識改革が不可欠です。
企業によっては、有給取得を評価項目に取り入れたり、取得状況を可視化して表彰する制度を導入しています。たとえば、ある大手保険会社では「有給取得キャンペーン月間」を設け、取得状況に応じて社内ポイントがもらえる制度を導入。社員が楽しく積極的に休みを取る文化が生まれました。また、別のIT企業では「リフレッシュ休暇制度」を設け、有給とは別に5連休を奨励。この制度により、有給も含めて年に最低10日以上の連続休暇を取る社員が増えました。こうした施策が「休むこと=悪いこと」という誤解を解き、健全な働き方改革につながっています。
有給休暇と転職活動の関係
転職活動における有給休暇の使い方
転職活動を進める際、有給休暇を活用することは非常に一般的です。
平日の面接や企業説明会など、現職中に参加するには有給を使うのが現実的で、効率よく転職活動を進める鍵となります。たとえば、Aさんは「1日有給を取り、午前に1社・午後に1社の面接を詰め込んで効率的に動いた」ことで、週末だけでは得られない情報を得られました。また、Bさんは計画的に「毎週金曜日に有給を取得」して、3週間連続で転職活動の時間を確保。結果的に短期間で内定を獲得しました。ただし、転職活動が理由とはいえ、理由を職場に正直に伝える必要はありません。「私用のため」と簡潔に伝え、業務に支障が出ないよう引き継ぎをしっかり行うことが大切です。
注意が必要な条件や状況
特別な事情(介護、看護など)の見解
介護や看護といった特別な事情で有給を使う場合は、法律的にも配慮されるべきとされており、周囲の理解も得やすい傾向にあります。たとえば、Cさんは高齢の母親の入院に際して、退院前後の付き添いのために連続して3日間の有給を取得。事前に上司に状況を説明したことで、快く了承されました。また、Dさんは子どもの急病に対応するため、午前中だけ有給を取得して病院に連れて行ったケースがあります。このような場合、育児・介護休業法など他の制度と併用することも可能です。職場によっては「看護休暇」や「時間単位の有給」制度を導入しているところもあるため、自分の会社の制度を確認しておくと安心です。
社員やアルバイトの違いによる有給休暇の取り方
有給休暇は正社員だけでなく、一定条件を満たせばアルバイトやパートタイム労働者にも付与されます。ただし、取得方法や日数には違いがあります。たとえば、Eさん(正社員)は毎年10日以上の有給が与えられ、希望すれば比較的自由に取得できる環境にあります。一方で、Fさん(週3日勤務のアルバイト)は、半年後に勤務日数に応じて5日間の有給が付与されました。ただし、シフト制で勤務するため、「事前に代わりのスタッフを立てる」など、調整が必要となりました。また、アルバイト先によっては有給制度の周知が不十分で、本人が申請しなければ使えないこともあるため、自ら制度を理解し、必要に応じて上司に相談する姿勢が重要です。
有給休暇の取り方のマナーを紹介!上手な取り方のコツとは?まとめ
有給休暇はすべての労働者に与えられた正当な権利であり、心身のリフレッシュやプライベートの充実に欠かせない制度です。
しかし、有給休暇の取得方法によっては、職場での印象を大きく左右することもあります。本記事では、有給の基礎知識から、上手な取り方、マナー、トラブル回避のポイントまでを具体例とともに解説してきました。
まず、基本となる労働基準法に基づく有給休暇の取得条件や付与日数の管理を理解し、制度を正しく使うことが第一歩です。その上で、上司への事前相談や、メールでの丁寧な申請、業務の引き継ぎなど、職場への配慮を欠かさない姿勢が重要です。たとえば「繁忙期を避ける」「チーム内での共有」「申請は早めに」など、ちょっとした心がけが、信頼と協調を生みます。
また、転職活動や家庭の介護といった特別な事情でも、有給を活用するケースは少なくありません。このような場面でも、正しい制度理解と誠意ある対応が、円滑な取得につながります。さらに、正社員だけでなく、アルバイトやパートタイマーでも条件を満たせば有給の権利があるため、職種や雇用形態にかかわらず知識を持っておくことが大切です。
有給休暇の取り方にはマナーがありますが、それは周囲との信頼関係を築くための“思いやり”でもあります。「権利だから取って当然」という考えに固執せず、計画的・協調的に休暇を活用していくことで、職場全体の雰囲気も良くなります。正しく、スマートに、そして気持ちよく有給休暇を活用して、より豊かな働き方を実現しましょう。